2026.09.17
台風・大雨シーズンの在宅トイレ対策
雨音に混じって、便器の奥から「ゴボッ」と音がした。それは、家の下を通る下水管が限界に近づいているサインかもしれません。
地震で断水したときにトイレが使えなくなることは、ずいぶん知られるようになりました。一方で見落とされがちなのが、水は出るのにトイレを流してはいけないという状況です。
台風や線状降水帯による大雨では、下水管に雨水が大量に流れ込み、家庭の排水が流れにくくなったり、トイレや風呂の排水口から汚水が逆流したりすることがあります。多くの自治体が、大雨のときは排水を控えるよう呼びかけています。
この記事では、大雨でトイレが使えなくなる仕組み、自治体が勧める「水のう」の作り方とその限界、そして雨が続く夜をどうやり過ごすかを、台風が来る前・最中・通過後の順に整理します。
この記事の内容
家庭のトイレや風呂の排水は、道路の下にある下水管へ流れていきます。大雨のときは、マンホールのふたの隙間や古くなった管の継ぎ目などから雨水が入り込み、下水管がいっぱいになります。
下水管が満水になると、家から流した排水は行き場を失い、逆に家の側へ押し戻されます。その結果、トイレや風呂場、洗濯機の排水口から水があふれることがあります。
「うちは分流式だから大丈夫」とは限らない
下水道には、汚水と雨水を同じ管で流す「合流式」と、別々の管で流す「分流式」があります。宇都宮市は、分流式の区域でも大雨時には下水道管に雨水が流れ込み、トイレなどの排水が流れにくくなることがあると説明しています。住んでいる地域の方式に関係なく、備えておく価値があります。
被害の規模も小さくありません。国土交通省によると、令和元年東日本台風では内水による家屋被害が全国で約3万戸にのぼり、全国16か所の下水処理場が浸水で一時的に処理機能を停止しました。
大雨の最中に、トイレや排水口から「ゴボゴボ」「ポコポコ」と音がすることがあります。宮城県名取市によると、これは大量の雨水が汚水管に流れ込み、管の中の空気が押し出されることで起きる現象です。多くは天候の回復とともに収まりますが、下流側の地域では雨が止んだあともしばらく続くことがあるとされています。
さいたま市や宇都宮市などは、大雨のときは浴槽の水を抜かない、洗濯を控えるなど、下水道への排水を減らすよう協力を呼びかけています。大分県中津市は、令和5年7月の豪雨で処理場の能力を超える水が流れ込み、管の中で流れが悪くなったり逆流したりしたことを紹介し、冠水が解消されるまでは排水をできる限り控えるよう求めています。
マンションでは、上の階の排水が下の階にあふれることも
下水道が満水の状態で上階から排水が続くと、建物内の排水管に汚水がたまり、下層階のトイレからあふれるおそれがあります。自分の部屋が高層階でも、大雨の夜は「流さない」ことが下の階の住人を守ることにつながります。
逆流への応急対策として、多くの自治体が紹介しているのが「水のう」です。北九州市上下水道局が紹介している作り方は次のとおりです。
45リットル程度のごみ袋を二重、三重に重ねる
半分(20リットル程度)ほど水を入れる
空気を抜き、口をきつく縛る
便器の中や、風呂・洗濯機の排水口の上に置く
20リットルの水は約20kgあります。持ち運べない場合は、便器の近くで袋に水を入れる、量を減らして複数作るなど、無理のない方法で作ってください。使い終わった袋はトイレに流さないよう注意しましょう。
水のうは万能ではない
ここに、見落とされやすい問題があります。水のうで便器をふさいだ時点で、そのトイレは使えません。排水の自粛を求められている間は、水のうを置いていなくても流すことはできません。
逆流を防ぎたい
便器を水のうでふさぐ。排水を止める。
でもトイレには行きたい
便器は使えない。流すこともできない。
台風の雨は一晩中続くこともあり、冠水が引くまで半日以上かかることもあります。その間、家族全員がトイレを我慢し続けるのは現実的ではありません。
中津市も、トイレ処理用の凝固剤を備蓄しておけば、水が流れなくても排泄物を可燃ごみとして処理できると案内しています。つまり大雨の備えは、「逆流を防ぐ道具」と「流さずに済むトイレ」をセットで用意することが基本です。
接近の2〜3日前
雨が強まる前〜最中
通過後
地震のあとに排水管の状態を確認する手順は、地震のあと、トイレを流していいのはいつ?で詳しく紹介しています。
便器に袋をかぶせて凝固剤を使う携帯トイレは、手軽で安価な備えです。ただし大雨の夜に使う場合、便器に水のうを入れているとその便器は使えないため、便器以外の場所で使えるトイレがあると安心です。
ラップポン・サニーは、水を使わず、排泄物を1回ごとにフィルムで熱圧着して密封するポータブルトイレです。大雨時の在宅避難では、次の点が役に立ちます。
| 排水管を使わない | 下水に一切流さないため、排水自粛中でも気兼ねなく使えます。 |
| 便器がいらない | 水のうで便器をふさいだままでも、別の部屋に置いて使えます。 |
| 上の階へ運べる | 総重量約7.0kgで折りたためるため、浸水に備えて2階へ移る際にも持って上がれます。 |
| 1回ごとに密封 | 袋を自分で結ぶ必要がなく、ごみ収集が再開するまでの保管もしやすくなります。 |
停電への備えも忘れずに
ラップポン・サニーは密封に電気を使います。本体はAC電源が標準で、別売りの専用ポータブルバッテリーや車用DCケーブル(CA-50)で車から給電することもできます。台風では停電が重なりやすいため、ポータブル電源などの給電手段を事前に確保しておきましょう。詳しくはラップポンサニーは何で動く?をご覧ください。
当店の商品には消耗品(フィルムロールと専用凝固剤)が60回分付属します。家族の人数から必要な回数を出す方法は防災トイレは何回分・何日分あれば足りる?、使用後の保管方法は捨て方・一時保管・衛生管理マニュアルで解説しています。
Q. 高台に住んでいても逆流は起きますか?
起きにくい傾向はありますが、下水管の状態や地域の排水方式によって異なります。また、自分の家で逆流が起きなくても、排水を続けることで下流の地域の負担を増やしてしまいます。自治体から排水自粛の呼びかけがあったときは、協力することが大切です。
Q. 小便だけなら流しても大丈夫ですか?
1回の量は少なくても、洗浄には相応の水を使います。逆流の兆候があるときや排水の自粛が呼びかけられているときは、小便も含めて流さない前提で過ごすのが安全です。
Q. トイレの備えがあれば、避難しなくてもいいですか?
いいえ。トイレの備えは、自宅にとどまれる状況で生活を続けるためのものです。浸水想定区域や土砂災害警戒区域にお住まいの場合は、自治体の避難情報に従って早めに行動してください。避難所に持っていく場合も、ポータブルトイレは役立ちます。
Q. 浄化槽の家はどうすればいいですか?
浄化槽が浸水した場合は、正常に機能していない可能性があります。点検が済むまではトイレの使用を控え、管理業者に確認してください。その間も、流さずに使えるトイレがあれば生活を続けやすくなります。
大雨のときは、水が出ていてもトイレを流せない時間が生まれます。下水の逆流は水のうである程度抑えられますが、便器をふさげばそのトイレは使えません。
台風シーズンの今のうちに、水のう用の袋と、便器を使わずに済むトイレ、そして停電時の電源をそろえておきましょう。雨の夜に家族が我慢しなくて済むことが、在宅避難を続けるいちばんの支えになります。
参考:国土交通省「下水道による浸水対策」/北九州市上下水道局「逆流防止対策」/宇都宮市「大雨時における下水道への排水抑制のお願い」/中津市「豪雨時の汚水排水についてのお願い」/名取市「大雨でトイレがゴボゴボしたり、流れづらいときは」/さいたま市「大雨時、トイレが流れない?逆流も?!」/佐賀市上下水道局「大雨時にトイレが流れないときの一時的な対処法」